オズの魔法使いの一節に、かかしとブリキの木こりの次のような会話があります。

「そこまで頭がよくないんだよ」とかかしは上機嫌で言います。「ほら、頭にわらが詰まっているだろ。だからオズにいって、脳みそをくださいと頼むんだよ」

ブリキの木こりは言いました。「ああなるほど。でも結局のところ、脳みそはこの世でいちばんいいものってわけじゃありませんから」

「きみは脳みそがあるの?」とかかしがたずねます。

「いいえ、頭はまったくの空っぽですよ。でも昔は脳みそもあったし、心もあったんです。両方試したうえで言うと、わたしは心のほうがずっとほしい」

 そして、彼が結婚するはずだったのに、魔女の呪いによって、身体が切り裂かれ、心を失ってしまった、と身の上話を続けます。

ひどい経験でしたが、その間にいろいろ考えて、なくしたものの中でいちばん大きかったのは、心をなくしたことだなあ、と思ったんですよ。恋をしているときには、この世でいちばんの幸せ者でした。でも、心がない人なんかだれも愛してくれません。だから、オズに心をくれるよう是非ともお願いするんです。

 それに対してかかしは

「それでも、ぼくは心より脳みそをお願いするな。心があっても、バカはそれをどう使うかわからないだろうから」

 それに対してブリキの木こりは言い返します。

「わたしは心をとりますね。脳みそでは幸せになれません。この世でいちばん大事なのは幸せなんですから」

オズの魔法使い

 この会話はすごく深いと思います。

 人の心というのは、嬉しさ、怒り、哀しさ、楽しさなど、それぞれの感情を感じ取ることができます。それが鈍感になってしまうと、人は誰からも愛されない。そして、幸せになれない。この世で一番大事なものを手に入れられないのです。

 人の心はどこで手に入るのでしょうか。人の心はどうやったら手に入るのでしょうか。